お風呂と健康

体の「冷え」は万病のもと。
入浴を積極的に利用して、 体を暖かく保つことが大切です。

医学博士 石原 結實

現代人の80%が冷え性です
「冷え症」というと、女性に特有な症状だと思われがちですが、実は「冷え」は、年齢や性別を問わない切実な健康問題です。一年中、手足や腰が冷えて、痛みやしびれがあるという、自他ともに認める「冷え症」の人が増えているとともに、自覚せずに隠れた「冷え症」で体調を崩している人がじつに多いのです。

「人類のうち80%は冷え症である」という説を出している医学者もいるくらいで、「冷え症」は、婦人病から慢性病からガン、脳卒中、心臓病まで、様々に形を変えて私たちの健康に大きな影響を与えていることがわかっています。

夏でもシャワーで済ませず、湯船に浸かることが効果的

さて、体を温めるという点で、即効性のあるのは、何と言っても入浴です。夏でもシャワーですまさず、お湯につかることは「冷房病」に苦しむ現代人には効果てきめんです。お風呂が「冷え」をとるのは次の8つの効果があるからです。

(1)温熱作用 温熱により血行が良くなり体調が整います。
(2)皮膚の清浄作用 皮膚の汚れをとり、老廃物の排泄を促します。
(3)静水圧の効果 下半身が水圧で圧迫されて血液の流れが良くなり、その結果、心臓や腎臓の働きも促進されます。
(4)浮力の効果 体が軽くなって痛みのある人の動作が容易になります。
(5)免疫力の亢進 様々な免疫機能が入浴によって高められ、体の抵抗力が増します。
(6)ホルモンの亢進 ホルモンの働きが活発になり、体のバランスが整います。
(7)線溶能が高まる 風呂で温められると血栓などの塊を溶かす働きが活発化します。
(8)脳内物質の分泌 脳にβーエンドルフィンが分泌され、リラックス状態になります。
「冷え」は万病の元になる
昔から「風邪は万病のもと」といわれますが、英語で風邪のことをcommon coldと表現するように、cold(冷え)こそは、万病のもとといえるようです。体温が低いと血行が悪くなり、腎臓や肺、皮膚などをはじめ、すべての臓器の働きがにぶって、水の代謝や排泄が悪くなります。体温が5℃も下がれば人は生きていられないことからもわかるように、体温低下は体に大きなダメージを与えるのです。しかし、現代がいかに「冷え」の時代かを象徴するものに、最近の子供の体温の低下があります。平熱が36.0℃に満たない子供が4割近くもいるとされ、いわゆる成人病にかかる子供たちが増えているというのです。

では、なぜ人々は「冷え」に悩むようになったのでしょうか。第一に夏も冷房が多用され、冬のみならず夏まで「冷え」の環境となっていること、第二に生野菜など体を冷やす食べ物を多食していること、第三に運動不足で汗をかかないのに水分を取りすぎていることがあげられます。つまり、現代の生活スタイルそのものが冷えと病を作りだしているのです。ですから、健康のためには積極的に体を温めることが何より大切になってきます。

正しい入浴で健康になる
健康な人はもちろん、体調の思わしくない人も症状に合わせて条件を少しずつ変えると、さらに効果的な入浴が楽しめます。

たとえば、肩凝り、腰痛などの痛みに対しては42.0℃以上の熱めのお湯で5分くらい温めると良いし、寝起きの悪い人は朝風呂を、熱めのお湯で短い時間入ると心身ともにシャキッとします。逆に、ストレス解消には39.0℃前後のぬるめのお湯に計15〜20分入るとリラックスできますし、不眠にも効果があります。喘息、高血圧症、ノイローゼに効くのもぬるめのお湯です。

入浴時の注意点としては、入浴前にしっかりとかぶり湯をすると血行が良くなって入浴効率が高まりますし、入浴後に下半身に冷水を浴びると保温効果が増します。お風呂は、万人にすすめられる簡単で快適な健康法。その点で、いつでも保温に保たれて何度でも入ることのできる24時間風呂は健康のために優れたシステムだと思います。

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